公務員として働きながら副収入を得たい。でも法律的に大丈夫なの?どんな副業ならできるの?申請方法は?
こんな疑問をお持ちの方のために、公務員の副業に関する最新情報と実践的なアドバイスをまとめました。2025年の最新ルールに基づき、合法的に副収入を得る方法を詳しく解説します。
公務員の副業は原則禁止だが例外もある
公務員の副業については、国家公務員法や地方公務員法によって厳しく制限されています。これは公務員が国民や市民のために働く奉仕者であり、その職務に専念する義務があるためです。
しかし、すべての副業が禁止されているわけではありません。一定の条件を満たせば、副業が認められるケースもあります。ここでは、公務員の副業に関する基本的なルールと、最新の動向について見ていきましょう。
公務員の副業に関する基本ルール
公務員の副業が制限される理由には、主に3つの原則があります。
- 信用失墜行為の禁止:公務員としての信用を損なう行為は禁止されています。
- 職務専念の義務:公務員は本来の職務に専念する義務があります。
- 守秘義務:公務に関する秘密を漏らしてはいけません。
これらの原則に基づき、国家公務員法第103条では「営利企業の役員等との兼業の禁止」が、地方公務員法第38条では「営利企業等の従事制限」が定められています。
ただし、完全に禁止されているわけではなく、許可を得れば副業ができる場合もあります。国家公務員であれば「所轄庁の長の申出により人事院の承認を得る」、地方公務員であれば「任命権者の許可を受ける」ことで副業が可能になります。
許可が必要な副業には、営利企業の役員や従業員として働く場合、個人で事業を営む場合、報酬を得る講演活動や執筆活動などがあります。一方、許可が不要な副業もあり、それについては後ほど詳しく説明します。
2025年の副業解禁の最新動向
公務員の副業に関する規制は、近年徐々に緩和される傾向にあります。2025年3月現在の最新動向を見てみましょう。
2018年6月に政府が「働き方改革関連法案」を可決し、副業・兼業の促進が明文化されました。その後、2019年4月には総務省が一部自治体で公務員の副業を試験的に許可し、2020年10月にはデジタル庁の創設を機に、地方公務員の副業制度の見直しが本格化しました。
2022年7月には東京都が特定の条件下で公務員の副業を認可する方針を発表し、2024年には大阪府が営利目的の副業を正式に許可するなど、公務員の副業の幅が拡大しています。
そして2025年1月24日、石破茂首相が通常国会で「地方公務員の兼業・副業の弾力化」を表明しました。2025年3月には政府が地方公務員の副業・兼業に関する新たなガイドラインを発表する予定で、全国的な拡大の可能性が高まっています。
この「地方公務員の兼業・副業の弾力化」では、地域貢献型の副業の推進、オンライン副業の容認、収入上限の引き上げ、許可手続きの簡素化などが主なポイントとなっています。地方公務員を中心に副業の範囲が広がる可能性が高く、今後の動向に注目が集まっています。
公務員でも許可される副業5選
公務員だからといって、副業の道が完全に閉ざされているわけではありません。ここでは、公務員でも比較的許可されやすい副業を5つ紹介します。
不動産投資で安定収入を得る
公務員が最も取り組みやすい副業の一つが不動産投資です。これは労働ではなく投資による利益を得るものであるため、法律上の問題が少ないとされています。
不動産投資には、アパートやマンションの一室を購入して賃貸収入を得る方法や、駐車場経営、空き家の再生など様々な形態があります。特に小規模な不動産投資であれば、許可を得やすい傾向にあります。
ただし、大規模な不動産経営になると許可が必要になることもありますので、始める前に必ず上司や人事部門に相談しましょう。また、不動産投資は初期投資が大きいため、十分な資金計画を立ててから始めることが重要です。
不動産投資の魅力は、比較的安定した収入が長期間にわたって得られることです。また、本業の公務員としての仕事に影響を与えにくいという点も、公務員の副業として適している理由の一つです。
株式・FX・仮想通貨などの資産運用
株式投資や投資信託、FX、仮想通貨などの資産運用も、公務員が行いやすい副業の一つです。これらは労働ではなく資産運用による利益を得るものであるため、基本的には許可が不要とされています。
株式投資では、長期的な視点で優良企業に投資する方法や、配当金を重視した投資方法などがあります。投資信託であれば、専門知識がなくても分散投資ができるため、初心者にもおすすめです。
FXや仮想通貨は値動きが大きいため、リスク管理が重要になります。特に公務員の場合、投機的な取引で大きな損失を出すと、職務に影響を及ぼす可能性もありますので、無理のない範囲で行うことが大切です。
なお、株式投資を行う際には、自分の職務に関連する企業の株式取引については、インサイダー取引に当たる可能性がありますので、特に注意が必要です。
執筆・講演活動で専門知識を活かす
公務員としての専門知識や経験を活かした執筆活動や講演活動も、許可を得れば行うことができます。
書籍の執筆や雑誌への寄稿、ブログやウェブサイトでの情報発信などが執筆活動に含まれます。特に自分の専門分野に関する内容であれば、社会的にも価値のある情報を提供できるでしょう。
講演やセミナーの講師を務めることも可能です。教育機関や民間企業、地域のイベントなどで、自分の知識や経験を共有することで報酬を得ることができます。
ただし、これらの活動は基本的に許可が必要です。単発の講演や少額の原稿料による報酬は許可が不要な場合もありますが、継続的な活動となると許可がなければ違反とみなされることがあります。
また、公務に関する秘密を漏らさないよう注意することも重要です。公務で得た非公開情報を執筆や講演で使用することは避けましょう。
小規模農業や家業の手伝い
実家が農家である場合や家業がある場合、その手伝いをすることも公務員の副業として認められることがあります。
小規模な農業であれば、週末や休日を利用して行うことができます。自家消費用の野菜を育てるだけでなく、余った作物を販売することも可能です。ただし、大規模な農業経営となると許可が必要になりますので注意しましょう。
家業の手伝いについても同様で、旅館や商店などの家業を手伝うレベルであれば問題ないことが多いですが、経営者になることはできません。あくまで「手伝い」の範囲内で行うことが重要です。
これらの活動は、地域社会への貢献にもつながるため、比較的許可が得やすい傾向にあります。ただし、本業の公務に支障をきたさないよう、時間配分には十分注意しましょう。
アンケートモニターやポイ活で小遣い稼ぎ
比較的手軽に始められる副業として、アンケートモニターやポイントサイトを活用した「ポイ活」があります。
アンケートモニターは、企業のマーケティング調査に協力することで報酬を得る仕組みです。自宅で空いた時間に行うことができ、特別なスキルも必要ありません。
ポイントサイトでは、ネットショッピングやサービス申し込み、アプリのダウンロードなどでポイントを貯め、それを現金や商品券に交換することができます。これらは労働というよりも、日常生活の延長線上で行える活動です。
これらの活動は小額の収入であり、本業に影響を与えにくいため、許可が不要とされることが多いです。ただし、収入が増えてきた場合は、確定申告が必要になることもありますので、収入管理はしっかり行いましょう。
また、個人情報の取り扱いには十分注意し、信頼できるサイトやサービスを選ぶことも重要です。
公務員が副業をする際の申請方法
公務員が副業を行う場合、多くのケースでは事前に許可を得る必要があります。ここでは、国家公務員と地方公務員それぞれの申請方法について解説します。
国家公務員の副業許可申請の流れ
国家公務員が副業を行う場合、「自営兼業承認申請書」を提出して許可を得る必要があります。申請の流れは以下のとおりです。
まず、兼業開始前までに兼業許可申請書に必要事項を記入します。その際、以下の資料も準備しましょう。
- 兼業先における契約条件(兼業を行う日時、報酬額、業務内容など)が記載された委嘱状・契約書案など
- 兼業場所への移動経路及び移動時間が分かる資料
- 兼業先について確認する必要がある事項が記載された資料(定款、事業報告や活動計算書など)
記入した申請書と必要資料を、各省ごとに定められた決裁手続を経て提出します。本府省等課室長級(行(一)8級等)以上の職員については、各省における許可に加えて、内閣総理大臣(内閣人事局)に対する申請・許可が必要となります。
異動による官職の変更など、許可された内容に変更がある場合には、再度申請が必要です。また、併任官職がある場合は、全ての併任官職における申請が必要となります。
申請に当たっての詳細は、各省の人事担当(兼業担当)に確認するとよいでしょう。各省によって個別に手続等のルールを設けている場合があります。
地方公務員の兼業許可手続き
地方公務員の場合も、基本的には「自営兼業承認申請書」を提出して許可を得る必要があります。ただし、具体的な手続きは自治体によって異なりますので、所属する自治体の規定を確認することが重要です。
一般的な流れとしては、まず上司に相談し、副業の内容や時間、報酬などについて説明します。その後、人事課などの担当部署に申請書を提出し、審査を受けることになります。
審査では、以下のような点がチェックされます。
- 公務に支障がないか
- 公務員としての信用を損なわないか
- 利益相反がないか
- 守秘義務に違反しないか
審査の結果、問題がなければ許可が下りますが、内容によっては条件付きで許可されたり、許可されなかったりすることもあります。
なお、2025年3月に発表予定の新たなガイドラインでは、許可手続きの簡素化が見込まれています。これにより、一部の副業については申請手続きが簡略化される可能性があります。
副業がバレるとどうなる?リスクと対策
公務員が許可なく副業を行った場合、様々なリスクがあります。ここでは、そのリスクと対策について解説します。
懲戒処分の可能性と事例
公務員が無許可で副業を行い、それが発覚した場合、懲戒処分を受ける可能性があります。懲戒処分には、戒告、減給、停職、免職などがあり、副業の内容や程度によって処分の重さが変わります。
例えば、副業の収入が少額で、公務に影響がなかった場合は戒告程度で済むこともありますが、高額の収入を得ていた場合や、公務に支障をきたした場合は、減給や停職などの重い処分を受けることもあります。
実際の事例としては、無許可でアルバイトをしていた公務員が減給処分を受けたケースや、副業で得た収入を申告せず、脱税していた公務員が免職処分を受けたケースなどがあります。
副業がバレる主な理由としては、住民税の変動、SNSでの発信、職場での噂などが挙げられます。特に確定申告をすると、住民税の額が変わるため、職場に副業の存在が知られる可能性が高くなります。
安全に副業を行うための注意点
公務員が安全に副業を行うためには、以下の点に注意することが重要です。
まず、副業を始める前に必ず上司や人事部門に相談し、許可が必要かどうかを確認しましょう。許可が必要な場合は、正式な手続きを踏んで許可を得ることが大切です。
次に、副業の内容が公務員としての立場や信用を損なわないものであることを確認しましょう。公序良俗に反するような仕事や、公務員の中立性を疑われるような仕事は避けるべきです。
また、副業の時間が本業の公務に影響を与えないよう、時間管理をしっかり行うことも重要です。疲労が蓄積して本業に支障をきたすようであれば、副業の量を調整する必要があります。
さらに、副業で得た収入については、適切に確定申告を行いましょう。脱税は重大な違反行為であり、公務員としての信用を大きく損なうことになります。
最後に、副業に関する情報をSNSなどで公開する際は注意が必要です。特に公務員であることを明かしながら副業の宣伝をすると、問題視される可能性があります。
公務員の副業成功事例
公務員の副業解禁が進む中、実際に成功している事例も増えています。ここでは、地域活性化に貢献しながら収入を得た例とオンライン講座開設で月収アップした公務員の例を紹介します。
地域活性化に貢献しながら収入を得た例
山形県新庄市の主任級の職員が、商店街活性化のために副業を行った事例があります。この職員は、地元NPO法人「アンプ」の理事長として、補助金に頼らない商店街活性化に取り組みました。
具体的には、商店街全体を100円ショップに見立てる「100円商店街」イベントを企画・開催しました。この活動は年に50回程度で、週休日や年次有給休暇を使って行われ、報酬は月に3万円程度でした。
この活動は、地域活性化や商業活性化のアドバイザーとしての役割を果たすだけでなく、地元住民とのコミュニケーションを通じて得られた知識や経験が公務にもフィードバックできると評価されました。
このように、地域の課題解決に貢献しながら副収入を得るという形の副業は、公務員としての経験や知識を活かせるだけでなく、社会的意義も大きいため許可が得やすい傾向にあります。山形県新庄市の事例は、公務員の副業の好例として総務省からも評価されています。
オンライン講座開設で月収アップした公務員
公務員の専門知識やスキルを活かした副業の成功例として、オンライン講座の開設があります。ある地方公務員の方は、得意なプログラミングの知識を活かし、地域の子どもや高齢者向けにオンライン講座を開設しました。
具体的には、公務員の知識を活かした業務効率化のスキルやエクセルの活用方法を動画で解説し、受講生を集めました。最初は少人数からのスタートでしたが、口コミで評判が広がり、徐々に受講者が増加。現在では月に数万円の安定した収入を得るまでに成長しています。
この事例の特徴は、本業の公務員としての経験や知識を活かしつつ、デジタルコンテンツという形で提供することで、時間や場所に縛られない副業を実現している点です。オンライン講座は一度作成してしまえば、その後は比較的少ない労力で収入を得られるという利点もあります。
また、教育関連の活動は公益性が高いと判断されやすく、副業として許可が得られやすい傾向にあります。特に地域の子どもや高齢者といった社会的弱者を対象としている点も評価されました。
2025年に向けた公務員の副業の展望
2025年3月現在、公務員の副業を取り巻く環境は大きく変わりつつあります。ここでは、地方公務員の兼業・副業の弾力化の内容と、今後拡大が期待される副業の種類について解説します。
地方公務員の兼業・副業の弾力化とは
2025年1月24日、石破茂首相は通常国会で「地方公務員の兼業・副業の弾力化」を表明しました。これは、地方公務員の副業に関する規制を緩和し、より柔軟に副業ができるようにするための政策です。
この弾力化では、主に以下のような内容が検討されています。
まず、地域貢献型の副業の推進です。地域の課題解決や活性化に貢献する活動については、積極的に許可する方針が示されています。例えば、NPO法人での活動や地域イベントの企画・運営、地域の子どもたちへの教育活動などが該当します。
次に、オンライン副業の容認です。デジタル技術の発展により、場所や時間に縛られないオンラインでの副業が増えています。これらについても、本業に支障がなければ許可する方向で検討されています。
また、収入上限の引き上げも検討されています。現在は副業での収入が一定額を超えると許可されないケースもありますが、この上限を引き上げることで、より多くの収入を得ることができるようになる可能性があります。
さらに、許可手続きの簡素化も進められています。現在は複雑な手続きが必要な場合もありますが、これを簡素化することで、より多くの公務員が副業に挑戦しやすくなることが期待されています。
2025年3月には、政府が地方公務員の副業・兼業に関する新たなガイドラインを発表する予定であり、これにより全国的に副業の範囲が広がる可能性が高まっています。
今後拡大が期待される副業の種類
2025年以降、公務員の間で拡大が期待される副業には、以下のようなものがあります。
まず、デジタル関連の副業です。プログラミングやウェブデザイン、SNS運用のコンサルティングなど、デジタルスキルを活かした副業は今後さらに需要が高まると予想されます。特に、自治体のデジタル化が進む中、公務員としての経験を活かしたデジタル関連のコンサルティングは、価値の高いサービスとなる可能性があります。
次に、教育関連の副業です。公務員の専門知識や経験を活かした講師活動や、オンライン講座の開設などが考えられます。特に、行政の仕組みや公共サービスの利用方法など、公務員ならではの知識を教える活動は、社会的にも価値があります。
また、地域活性化に関わる副業も拡大が期待されます。空き家の活用や地域イベントの企画・運営、地域ブランドの開発など、地域の課題解決に貢献する活動は、公益性が高く、副業として認められやすい傾向にあります。
さらに、フリーランスとしての専門サービス提供も増えるでしょう。法律相談や税務相談、行政手続きのサポートなど、公務員としての専門知識を活かしたサービスは、需要が高まると予想されます。
これらの副業は、公務員としての経験や知識を活かせるだけでなく、社会的にも価値のあるサービスを提供できるという点で、今後の公務員副業の主流となる可能性があります。
まとめ:公務員も工夫次第で副業収入を得られる
公務員の副業は原則禁止されていますが、許可を得れば様々な形で副収入を得ることが可能です。不動産投資や株式投資などの資産運用型の副業、執筆・講演活動、小規模農業や家業の手伝い、アンケートモニターやポイ活など、公務員でも取り組める副業は多岐にわたります。
副業を始める際は、必ず上司や人事部門に相談し、許可が必要かどうかを確認しましょう。無許可で副業を行うと、懲戒処分を受ける可能性があります。また、副業の内容が公務員としての立場や信用を損なわないものであることも重要です。
2025年は公務員の副業に関する規制緩和が進む年となりそうです。特に地方公務員の兼業・副業の弾力化により、副業の範囲が広がることが期待されています。
公務員の副業は、収入アップだけでなく、新たなスキルの習得や人脈の拡大、社会貢献など、様々なメリットがあります。工夫次第で、本業と両立しながら充実した副業生活を送ることができるでしょう。